「猩紅熱」という病名は知っていても、
身近でその病気にかかっている人は見たことが無い……という人も、いるのではないでしょうか。
この猩紅熱という病気、
赤毛のアンや若草物語などの海外文学ではよく書かれますが、
日本ではあまりメジャーな病気ではありません。
今回は、猩紅熱がどんな病気かに迫ってみましょう。
猩紅熱ってどんな病気?
猩紅熱とは、溶連菌感染症のひとつで、
子供に感染することが多い発疹性の伝染病です。
A型連鎖球菌という菌に感染するとかかり、
人から人へとうつる病気のため、感染者は他の人にうつさないように注意が必要です。
症状としては、発熱、のどの痛み、
発疹、そして舌に赤いぶつぶつが出るいちご舌が代表的なものとして挙げられます。
A型連鎖球菌に感染すると、まず、1〜7日の潜伏期間があります。
そのあとに、まずは発熱とのどの痛みが出て、それから12〜24時間後に発疹が出始めます。
発症後は、7日程度で発疹部分の皮がむけ、熱も下がります。
熱が下がった後は、他の人にうつす心配もなくなるので、通常通りの生活を送っても良いでしょう。
感染者のお世話をするときは、マスクなどをして接するようにすると良いでしょう。
日本での猩紅熱はどんな位置付け?
日本では、明治時代から法定伝染病として扱われ、
命を落とすリスクがある病気として大変恐れられていました。
ですが、抗生物質が開発されると、
一気に治療が簡単になり、1999年からは法定伝染病から外されています。
1999年というと、ごく最近のように思えますよね。
でも、「猩紅熱」という病名はあまり聞く機会が無かったのではないでしょうか。
それがなぜかというと、
日本では、「猩紅熱」と診断すると法定伝染病として届け出が必要になることから、
それを避ける目的で、「溶連菌感染症」とだけ診断して、治療を行ってきたためだそうです。
つまり、耳にする機会が少なかっただけで、日本にも猩紅熱は存在していたのです。
命に関わるリスクが激減したために、面倒な手続きを省いていたということですね。
アメリカ文学でよく書かれる理由とは
しかし、なぜか「赤毛のアン」を始めとする海外の文学作品では、猩紅熱の描写がよく見られます。
実はアメリカでは、1943年〜1945年にかけて、
猩紅熱によって年間で7万人という膨大な死者が出ていたという記録があります。
それ以降は、猩紅熱による死亡者は減少していきますが、
それまでは、昔の日本と同じく
「猩紅熱=死ぬかもしれない病気」という認識が強かったことは間違いありません。
これだけ死者が出ているのですからアメリカやヨーロッパでの認知度は高く、
登場人物が命の危険にさらされたり、大切な人を失う原因として使われるというのもわかりますね。
よく知られていない病気や架空の病気で苦しむ様子よりも、
身近な恐ろしい病気をモチーフにした方が、読む側も感情移入しやすいのでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
猩紅熱がどんな病気か、日本での猩紅熱の認識、
そして海外の文学作品で多用される理由などについて、ご説明しました。
「猩紅熱」という文字だけ見ると、自分の身近にはあり得ないような、
遠い異国の病気のような印象を受けるという人も少なくないのではないでしょうか。
ですが、ただ「猩紅熱」と呼ばれないだけで、
その原因、A型連鎖球菌による感染症は、現在の日本でもよく見られる病気です。
現代は医学が発展していますから、
本の中で描かれているような命の危険は極めて少なくなっているため安心ですが、
昔の人は、それはそれは猩紅熱を恐れていたことでしょう。
私たちは、現代の医学の進歩に感謝するべきですね。