2013年に発見された、ボツリヌス菌の新しい毒素、h型
この毒素は、従来のボツリヌス菌毒素に比べ、
桁違いに上回る凶悪な毒性を持つことで、話題となりました。

もし、このh型毒素が兵器として利用された場合、どうなってしまうのでしょうか。
今回は、このボツリヌス菌h型の毒性などを中心に、ご説明します。

ボツリヌス毒素には、a〜hまでの型がある

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ボツリヌス菌には、菌が出す毒素の種類によってa〜hまでの8種類の型があります。
このうち、h型2013年に新しく発見されたもの。

そのため、一般的なボツリヌス菌の説明では、
まだ「a〜gまでの7種類」という記載のところも多いようです。

この中で、人に対して食中毒を起こす型は、
a、b、e、fの4種類とされていました。
ただ、これらの型のボツリヌス菌が食品内で繁殖しやすいというだけの話で、
その他の型の毒素人体に無害だということではありません

つまり、化学兵器としての使用を前提とすると、
h型も含め、全てのボツリヌス菌兵器利用できる可能性があるということです。

あまり好ましい想像ではありませんが
一般食品に混入しがちなボツリヌス菌を意図的に培養し、
その毒素を抽出して化学兵器として使用するということは不可能なことではないのです。

ボツリヌス菌h型毒素の殺傷力

h型よりも以前に発見されているボツリヌス毒素自体も、非常に強力な毒性を持つことで知られています。

日本では、北海道の飯寿司や、
熊本の辛子レンコンなどからボツリヌス中毒が発生し何人もの人が亡くなりました。

このように致死率の高いボツリヌス毒素ですが、
今回の主題のh型はそれらをはるかに上回る毒性があることで危険視されています。

昔から発見されているボツリヌス毒素は、一人当たり800ナノグラム
つまり、計算上は500グラムあれば全人類を死滅させることができることになります。
これだけでもかなりの毒性だということがわかりますが、
h型の場合は、その1/60の量、つまり一人当たり13ナノグラム
8.3グラムで全人類を死に至らしめることが可能だということです。

8.3グラムと言えば、食塩で言えば大匙1/2杯と少し。どれほど少量なのか、わかりますね。

この殺傷力の高さゆえ、h型は他のボツリヌス菌よりも兵器利用されることへの懸念が強く持たれています。
そのため、h型ボツリヌス菌についての研究論文を発表せずに極秘扱いするなどの配慮がなされているのです。

ボツリヌス菌についてはこちらの記事もご参考に!

ボツリヌス毒素の人体への影響

そもそも、ボツリヌス毒素はどのようにして人を死なせるのでしょう。

まず、ボツリヌス毒素は神経毒のため麻痺によって死に至ります。
ボツリヌス毒素が体内に入ると、
神経に作用し、神経から筋肉を動かす信号を送れなくします。

そのため四肢が麻痺し、いずれ呼吸筋までも麻痺して、呼吸不全になって死んでしまうのです。

その間、発熱などは無く意識もはっきりしている状態のままのため、
じわじわと自分が死に近づいていることを感じながら死んでいくことになります。

このように書くと大変恐ろしい毒素ですが、
a〜g型の毒素だと、発症から24時間以内抗毒素を投与すると命の危機は免れます

ただ、h型はまだ抗毒素が発見されていないため、
今のところは中毒になってから助かる術はありません
だからこそ、化学兵器として悪用されたら最後、誰一人として生き残ることは不可能に等しいのです。

h型のような恐ろしい種類のボツリヌス菌の予防法は、残念ながらありません
身近なボツリヌス菌は除菌水で予防できるそうです。
次亜塩素酸が効果的なようなので、このような除菌スプレーを使って日頃から、殺菌消毒を心がけましょう。

まとめ

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ボツリヌス菌の恐ろしさ、
その中でも特に凶悪なh型の毒性などを中心にご説明しました。

ボツリヌス毒素が兵器利用される場合、
一番考えられるのはテロリストによる犯罪です。
日本でのテロリストの犯罪と言えば過去のオウム真理教による地下鉄サリン事件がありますね。

この時は、ボツリヌス菌ではなく化学物質のサリンでしたが
オウム真理教では過去にボツリヌス菌の散布をしようとして、
未遂に終わったことがあると報道されています。

このように、民衆の危険を脅かすボツリヌス毒素ですが、
一方では、筋肉の働きを抑制させる作用から、美容整形の「ボトックス注射」などにも利用されています。
化学の進歩はいつの時代も兵器利用と紙一重で、便利なものと危険なものの狭間にあるものと言えるでしょう。